冨田勲は斯く語りき/冨田サウンドとコンピューター

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冨田サウンドとコンピューター
サントリーサウンドマーケット
1983年3月15日 FM愛媛

「冨田サウンドとコンピューター」
オープンからCDに録音することにして、ひと通り聞いてみた。
番組の終わりに、冨田さんがこんなことを話していた。
30年前、冨田さん50歳

ところで、これからのコンピュータミュージックっていうのは、
どんな方向に向いていくとお考えですか?
*
う~ん、まあねえ、今ひとつのコンピューターミュージックというとピコピコという音が入っ
たり、ヒユ~なんて音が入ったり、まあ、それがコンピュータミュージックというようにね、
一般には捉えてますけども、じつは色んな表現が出来るわけね。だから、さっきあの~、例え
ばコンピューターっていうのは、定規を当てたような演奏に適してると僕いいましたけども、
手描きのような表現もコンピュータを使って出来るわけね。ということはあのう、表現範囲が
非常に将来広がる。自由な表現が出来るということ。それから、もうひとつは新しい音の作り
方として、例えばフェアライトなんてのはライトペンでね、ブラウン管に波形を自分が書くわ
け。つまりあの、レコードの溝ってよく見ると曲がってるでしょ。アレが実はそこを針が進む
と音そのものになる。それを、レコードの溝みたいなものを書いちゃうわけね。そうすると、
そのとおりの音を出してくれるという装置。それが備わっている。そうなると実はね、その昔
1932年というと今から50年くらい前なんだけどドイツ人にね、ルドルフ・フェニンゲル
という人がショスタコービッチの第5交響曲を手書きで、つまりその、波形を描いちゃったわ
けね。で、それを1939年にニューヨークで発表会をやっているわけ。で、当時、テープレ
コーダーとかそういうものが無いから、その当時サウンドトラックしか使えなかったわけ、音
を出す方法として、映画のね、トーキーの。それで、紙に大きく書いた波形を、そんなブラウ
ン管とかライトペンなんて無いからね、大きく書いたその波形を写真に撮って小さくしてフイ
ルムに焼き付けて音を出したわけね。で~、おそらくね、この人が、今のね、時代、もし生き
てたらね、ライトペンでブラウン管に向かって自分の思うとおりの波形が描けるなんつ~てっ
たら、きっと随喜の涙を出したんじゃないかって気がするわけ。だから、そういう新しい演奏
のしかたとか、音の作り方みたいなものがね、また新たに加わってくると思うなぁ。
*

冨田さん曰く 
「フェアライトをフェニンゲルが手に入れたら・・・」
 
ボーカロイドを知った冨田さん
随喜の涙
そして、21世紀も残り少なくなったある日
 
「2012年の11月にね、冨田勲という日本人がボーカロイドと生オーケストラのコラボレーション作品を発表したんだって。おそらくね、この人が、今のね、時代、もし生きてたらね、ホロデッキでサイバーオーケストラに向かって自分の思うとおりの演奏をさせることが出来るなんつ~てったら、
きっと随喜の涙を出したんじゃないかって気がするわけ」
*
TNGに由るとホロデッキは23世紀の技術らしいけど、あの世紀の要人インタビューの場面で使われていた取材用の録音機は21世紀(現在)のICレコーダーよりデカかった。案外、ホロデッキの実用化は早いかもしれない。