続・グリーン車の子供 / ラジオ文芸館

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戸板康二(1915~1993)
演劇・歌舞伎評論家
推理作家、随筆家
 
グリーン車の子供」
1976年
第29回、日本推理作家協会賞・短編部門
(1964年 東海道新幹線開通)
 
中村雅楽(なかむら-がらく)
戸板康二推理小説シリーズ「中村雅楽探偵譚」に登場する架空の歌舞伎役者。すぐれた推理力を示す名探偵でもある。屋号高松屋立役を主とする。中村歌右衛門の系統に属する名跡であるらしい。
探偵小説を好み、観察力・注意力に優れると自認する雅楽が扱うのは、主として歌舞伎界を中心とする芸能の分野で起こった難事件・怪事件であり、「東都新聞」芸能部に勤務する竹野記者を通じてさまざまな事件の情報がもたらされる。推理にあたっては、雅楽ホームズ、竹野がワトソンの役回りとなり、場合によっては警視庁の江川刑事の助力を得ることもある。どちらかといえば安楽椅子探偵的な推理が多いのが、雅楽の特徴である。(ウィキペディア
グリーン車の子供」
以下
ネタばれ満載なので注意してください。
*
《あらすじ》
松屋という屋号で呼ばれる老歌舞伎役者・中村雅楽が、様々な事件を解決するシリーズの一作。
雅楽は7年ぶりに「盛綱陣屋」への出演依頼を受けた。
しかし、
子役の配役が気に入らず、なかなか出演を承諾しない。そんな折、法要のため大阪を訪れた雅楽は、友人の竹野記者とともに帰京する新幹線のグリーン車の中で、一人の幼い少女と隣の席になる。
東京駅に着く間際に、雅楽は「陣屋」への出演を決めるのだが、
その理由とは…。
*


以下、ネタばれ
 
乗り合わせた少女は、東京の両親の元へ一人旅。
乗り込むときに、見送りの親戚(?)から隣りの座席に居た雅楽は付き添いを頼まれる。
少女はとても大人しく静かにしている。
話しかけても返事は首を振ったり頷いたりするのみ。
途中乗車してきた中学生の男の子たちの騒がしさとは対照的だ。
次第に少女に好意を持つ。
昼食をビュッフェに誘ったが弁当持参で席に残った。
 
ビュッフェで同行の友人・竹野記者と
少女の行動について話す。
 
座席の近い途中乗車の婦人とは親しく話しているようだ。
 
(このあたり、順序が逆だったかもしれない)
 
東京駅に着く前に、雅楽は歌舞伎出演を決意したことを竹野記者に話す。
急に翻意した雅楽をいぶかる竹野記者。
 
雅楽は女の子に近づき、こう言った。
「うまく化けたね」
そのグリーン車の子供は、出演を渋る原因の子役(男の子)だったのだ。
途中乗車の婦人は、子供の母親だった。
*
つまり、子供を雅楽に引き合わせて、役者としての素質に気付かせたのだった。


伏線がちりばめられていたことが最後に分かる。
男の子が女の子に変装するのは実に歌舞伎的。


ラジオを聴いていて、とても面白かったので検索してみた。
歌舞伎に詳しい人や、推理小説好きには、割りあいネタが分かりやすいそうな。
私は、女の子に次第に惹かれ、子供もいいもんだと思い直すのだろうなあ、
その程度だった。
一本取られたなあ、と思った。
が、
この物語には、作者のミスがあるとのこと。
推理小説にミスとは如何なことかと検索した。
それは、
乗車した「ひかり」は熱海には停車しないことだった。
星真一がそれを指摘した。
出版社は作者と相談して「ひかり」を「こだま」に変更して出版した。
ところが、
東京へ帰京する人が好んで座席指定してまで「こだま」に乗るだろうか?

という欠陥が現れて・・・・・・(以下略す)


私にはそれ以外にミスというか、欠陥があると思う。
歌舞伎役者、それも往年の名優に
子供の顔も覚えられないことってあるはずが無いじゃないか!!
「どうも、あの子役の演技が気に触る」
その子供が目の前に居るのに、
なんぼセーラー服で変装していたってだよ。
舞台の子供は厚化粧で素顔は分かりにくいというのは、理由にならない!
日常の姿を見たこと無かった、楽屋入りも?
爺さん、ぼけちゃったの?^^;


《蛇足》
いろいろ評論を読んでみましたが、
男の子が女の子に日常の場(限定的ですが)で変装するということに言及したものが無かった。
執拗に探すと有るかも。
 
私的には、ここが一番インパクトがあったのです。
エロティシズムを感じざるを得なかった。
 
それわぁ、歌舞伎の要素の一つなんだから、言わずもがな。
 
そうなの?