B787 バッテリー不具合で思うこと 6
飛行記録は過充電示さず、ANAの787型機バッテリー=運輸安全委
[東京 23日 ロイター] 運輸安全委員会(JTSB)の後藤昇弘委員長は23日の定例会見で、高松空港に緊急着陸する重大トラブルを起こした全日本空輸(ANA)<9202.T>の米ボーイング<BA.N>787型機のバッテリーについて、飛行記録データを解析したところ、飛行中の出力電圧は31ボルトで「特に異常な高い値を示していなかった」と述べた。
数値が示すところでは「表面上、過充電の状態はなかった」との認識を示した。
ただ、正常の範囲内を示していた電圧が、ある時点で急激に下がってゼロに近い状態になったことも分かった。電圧が低下したのは、コックピットで異臭を感じたのとほぼ同じタイミングだったという。運輸安全委は今後、その理由について詳しく調査していく方針。
バッテリーは非常用電源として用いられており、機体が飛行中は各システムに電力を供給していない。そのため、飛行中のバッテリーの出力電圧は、バッテリーの充電状況を示すものとしてみることもできる。
一般的に、リチウムイオン電池は過度に充電された場合に発火する可能性があり、発火すると化学物質が酸素を発生させるため消火しにくいとされる。ボーイングは過充電を防ぎ、バッテリー火災を封じ込め、煙が客室に達する前に吸い上げるための複数のシステムを設計したと説明している。
緊急着陸については、異常がみられたバッテリーを中心に原因調査が行われている。現在、当該バッテリーは機体から外され、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の施設でCTスキャンの検査を行っている。JTSBと米運輸安全委員会(NTSB)の調査チームのほか、製造元であるジーエス・ユアサコーポレーション<6674.T>のエンジニアが参加。電源系を設計した仏タレス<TCFP.PA>の関係者も、仏航空事故調査局の調査アドバイザーとして立ち会っている。
CTスキャンの撮影は23日までに終了する見通し。24日以降、京都府にあるGSユアサに持ち込み、分解してセルの1つ1つを解析する。
また、国交省航空局と米連邦航空局(FAA)は、運輸安全委の調査と並行し、21日からGSユアサに立ち入り検査を行っている。トラブルが起きたバッテリーの設計・製造の過程で妥当な作業が行われているか調べており、検査は24日も行う予定だ。
(ロイターニュース 杉山健太郎、浜田健太郎;編集 佐々木美和、久保信博)
運輸安全委によると、充電器はバッテリーと一緒に取り外し、保管されている。外見上の損傷はないが、今後、米国メーカーで正常に機能するかなどを調査する方針という。
米運輸安全委、787型機めぐり充電装置メーカーなど調査へ
情報BOX:ボーイング787問題、リチウムイオン電池をめぐる状況
リチウムイオン電池向けの充電装置は、英メギット<MGGT.L>傘下のセキュラプレーン・テクノロジーズが製造、APUは、米ユナイテッド・テクノロジーズ<UTX.N>傘下のプラット・アンド・ホイットニーが製造しており、両社はともに調査に協力する姿勢を示している。
NTSBは20日、22日にセキュラプレーンが拠点を置く米アリゾナ州ツーソンに調査団を派遣し、充電装置のテストや、APUコントローラーからデータのダウンロードを行う計画を明らかにした。プラット・アンド・ホイットニーのAPU製造拠点である同州フェニックスでも同様のテストを実施するとしている。
セキュラプレーンは2004年に充電装置の開発に着手したが、2006年11月、テストに使用したリチウムイオン電池が爆発、火災が発生し、多額の損失を被った。
今回、NTSBがセキュラプレーンの施設への調査団派遣を決定したことで、2006年の火災をめぐる疑念が浮上している。
ボーイングの広報担当マーク・バーテル氏は、2006年の火災は電池の設計ではなく、試験装置の不適切な設定が原因だったことが調査で判明していると述べた。現在の787型機に絡む調査に関してはコメントを拒否した。