月刊ステレオ 9月号

今、オーディオ誌でおもしろいのは月刊ステレオである。

音の見える部屋は、石田善之が登場した。
部屋が違う、SPが違うと思ってたら、別荘のシステムだった。
月に数日から2週間ほど滞在するそうだ。
石田さんは自作派だそうで、長岡さんとはタイプが違うが、
資産家かどうかわからないが、少し親近感を持っている。



今月から新連載が始まった。
これを読みたくて買った。
カートリッジ物語り「音溝のマイスター列伝」
第1回目の登場人物は、マイソニックラボの松平吉男氏である。
氏の設計したと言われるオーディオクラフトのプレーヤー
AR-110についてメールで尋ねたことがあったが、返事は無い。

松平氏福島県の出身。
昭和30年代の就職氷河期
東京に出てきて新聞広告で見つけたのが「東京サウンド」。
デンオンターンテーブルにトーンアームとカートリッジを組み付けてNHKに納品していた。

東京サウンドは解散して(?)、スペックスに入社。
MCカートリッジをサンスイに納品していた。
トランス搭載のカートリッジだった。
月産4,000個!!!

2年で退社して、アントレーを立ち上げる。
米国向けMC型の開発、製造。

アントレーは商標(?)の問題でトラブルが起きて、松平氏は退社。
アントレーはソルティ・アコースティックとなる。

次は、光悦に関係する。
光悦の菅野義信氏とスペックスの朝倉収氏は旧知の仲だった。
菅野氏は謂わばマークレビンソンで、松平氏はジョン・カールか?
光悦の心臓部はダンパーゴムであったらしい。
菅野氏は本来、自動車業界で生きていて、
ダンパーゴムに最適な素材をエンジンマウントゴムを製造しているメーカーに特注していた。

続いて、オーディオクラフトの花村氏に声を掛けられて入社。

クラフトのワンポイント・オイルダンプトーンアームは、
使い方が分からない人まで買ってしまって、メンテナンス業務が繁忙を極めたらしい。

それで(?)、2ピボットのAC-3300シリーズに転換した。

その頃、東北大学が開発したセンダストを知る。
これを使って、AC-01を作る。

しかし、音が変わりすぎるということでセンダストは使われなくなっていく。
テープヘッドに使うのがメインで、カートリッジはおすそ分けみたいな関係だから、
テープヘッドの需要が無くなったのが影響したのかもしれない。

当時、新型高性能マグネットがいろいろ開発されたが、
コア材料がそれに追いつかなかった。
コアが磁気飽和したら元も子もないのである。

政府の委託を受けて新素材の研究開発をしていた第一合金という会社があった。
その会社が廃業する際に、試作品を分けてもらうことになった。
その中に、理想にかなり近づいた新素材があった。

ところが、既に時はCD時代。
カートリッジの新製品なんて時代遅れだろうってことで新素材はお蔵入り。
松平氏は、2000年の退職時にその新素材をいただいたらしい。
退職祝いか? 退職金代わり?

退職したはいいが、入院、手術という不運に見舞われる。
病床で、あのコア材料に掛けてみようという気持ちが湧く。

退院して、マイソニック・ラボを立ち上げる。
Eminent を製品化。

*

マイソニックラボの最高価格カートリッジは¥750,000もする。
そんな製品を手作りする松平氏は、
「価格を下げたいですね。カートリッジは高くなりすぎた」
という。

私は光悦は自分のシステムで聴いたことがあるが、エミネントはまだ無い。
ベースのデザインがどうも好きになれない。


2ピンヘッドシェル「密着」のフィデリックスがレコードの偏芯検知器を製品化していた。
ナカミチのアブソリュートセンターサーチを人為的にやろうというのである。

一台5万円というので購入を躊躇うが、
フィデリックスサイトの
【多くの曲は和声学でいう「解決」という安定形の和音で終曲しますが、
揺れが無くなると、「解決」での確信に満ちた説得力が蘇ります。】
という説明に突き動かされてしまった。

買うかもしれない。