インサイドフォース (レコードの回転は、アームを内側に引っ張らない)


上の動画は、フィデリックスの中川伸さんがアップした動画です。
サイドフォースによってカンチレバーが動く様子を現しています。

残念なのは、カンチレバーが元から変位しているようで、
カートリッジの正中線からずれています。
インサイドフォースキャンセラーを掛けすぎたまま、使い続けたのでしょうね^^)。

それはさて置き、
インサイドフォースの働きについて、誤解というか、思い込みと言うか、勘違いと言うか、
メーカーも評論家も雑誌編集者もブロガーもオーディオマニアもオーディオショップも、
ある言葉に汚染されまくったままになっているようです、
その言葉とは、
「アームが(針先が)内側に引っ張られる
です。

トーンアームについて考える:第2弾

このハイファイ堂の記事は、
こちらを引用しています。
ファイルウェブ・コミュニティ 「インサイドフォースの発生メカニズム」
この記事の内容は正しいですが、
引用している(ハイファイ堂も引用している)記事は問題があります。

イメージ 1

問題とは、「カートリッジはIFによりセンター方向に引っ張られる」と表現していることです。
ファイルウェブ・コミュニティの文章は、これを良しとせず、
「カートリッジを内側(レコードの中心方向)に押すために発生する」
と、正しい表現に書き換えて(言い換えて)います。
この記事に、色々コメントが寄せられています。
経験豊富なベテランらしき人が異論を述べていますが、その認識を訂正するというか、
誤解を解く(溶く)のは、いろいろなWeb討論をみて(2ちゃん等)不可能と思います。

まあ、その不可能をおもいつつ、この記事を書いています。

インサイドフォース(IF)は、
アームが内側に動く(動きたがる)力(の大きさ)である。
それは、レコード溝が針先を流れの方向に押していく動きの力の分力として求められる。
決して、音溝がアームを内側に向かって動かしているのではないのである。

さて、
掲載したフィデリックス動画を見ても、なんのことやら分からない方は、
このブログを見ている人には居ないと思います。

でも、理解の仕方は人それぞれなので、説明と言うか、わたしの理解の仕方を書きます。

イメージ 2この状態は、カンチレバーがカートリッジの正中線に一致しており、演奏中であれば、力学的に正しいというか、求められる正しい力学関係にあるといえます。











イメージ 3
この状態は、カンチレバーが外側に変位している状態です。
一般的に、カンチレバーが外側に「曲がる」と書く場合が99%ですが、弓なりにゆがむのではないですから(微視的にはそうですけどね)適切な表現ではないですね。
インサイドフォースキャンセラーを掛けないで演奏するとこうなります。
こうなることを知らないメーカー、評論家、ベテランが沢山いらっしゃいます。知ってて「キャンセラーを掛けてはいけない」と書くメーカーのカートリッジは、予め内側に変位しているなら流石ですが、そんなこと聞いたことがありません。針圧を得るためには変位させてるのにね。コンプライアンスが無きに等しくても。

イメージ 4この状態は、インサイドフォースキャンセラーを掛けすぎて演奏している状態です。
このまま演奏を続けると、針が曲がったままになってしまうと色んなところに書いてある。
これは嘘ですね。
そういう曲がったままになっているカートリッジは、使い切って針が沈んでしまって本当に使えなくなってしまった、なんてことは聞いたことがありませんし、そういうカートリッジの写真は、まだまだカンチレバーは沈み込んでいません。
元からそうなっていたに違いありません。
(但し、EMTを除く^^;)


このように、レコード溝が針先接触点を押すことによって、
言い換えれば、
アーム本体にとっては針先チップによって引っ張られることによって、
アームには回転モーメントが生じて、
カートリッジを内側に押し付けることになります。

チップがアームを引っ張る力は、音溝の状態(盤のうねりや録音レベル、つまり振幅)により
刻々と変化します。
ということは、アームは左右(内外)に揺れ動くことになり、
その揺れ動きはカンチレバーに変位(振動)をもたらします。
つまり、信号として出力されます。
録音信号によって(音溝振幅変動によって)、アームが左右に振動し、
それが本来の音楽信号出力に加算されます。
音楽信号が変調されるのです。
これは、大問題であります。

同様の問題が、アームの上下運動によって生じます。


そろそろ書くのが嫌になってきました。

レコード盤は、カートリッジを「内側に引っ張る」なんてことは、絶対にありえません。
レコード盤は、針先の接触点を流れの方向に「押す」だけです。
レコード盤と針先の間(接触点)には確かに分子間引力は存在しますが、
そんな分子間引力よりとてつもない大きな圧力が針先接触点に働いて「押して」いるのです!


純正リニアトラッキングアームが、演奏中に移動するのも、
レコードが内側に引っ張るのではなくて、
音溝外側が押していることは、
ここの論議では別ではありますが、自明のことであります。

これを「内側に引っ張る」と誰かがどこかで書いているやに思われます。
無力感に襲われます^^;)。