インサイドフォース考

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音溝に対してトラッキングエラーが生じている状態を考える。
ピュアストレートアームでも良いし、オフセットアームでもよい。

針先が左右の音溝に接しているのが普通の、当たり前の再生状態だ。

この時、左右の音壁に対して、同じ接触圧力が掛かっているかといえば、そうではない。
左右の音壁に対して、左側の壁に対する圧力のほうが高くなっている。イメージ 2


針先の音壁との接触ポイントに働く音溝走行方向の力に対して、針を支えようとする力(抗力)が働き、二つの違う方向の合成力が針先を音壁に押さえつけようとする。

右壁については、音壁から遠ざけようとする力が働く。

この左右の音壁と針先の力関係を称して、サイドフォースが発生していると謂う。

このトラッキングエラー状態でのサイドフォースに関する議論は、不毛である。
それは、対処方法がが無きに等しいことと、音溝の音楽信号による蛇行はどうするんだと言われれば、お手上げだからである。


そもそも、インサイドフォースに関して、不毛の議論が続くのは、
このトラッキングエラーが起こさしめるサイドフォースと、
オフセットアームが起こさしめる回転モーメントによるサイドフォースをごっちゃにしているからだ。

その点、アンチスケート・デバイスという文言使いはいい方向かもしれない。



トーンアームが内側に「引っ張られる」と表現する。
これが、また別の問題を引き起こしている。



インサイドフォース・キャンセラーの効かせ過ぎで、
カンチレバーがレコードの内周側に傾いてしまっているカートリッジを良く見る。
こういう言い方で、あたかもインサイドフォースキャンセラーは不要であると言いたそうな文章を良く見る。

インサイドフォースキャンセラーの無いトーンアームで使われた所為か、
カンチレバーがレコードの外側に傾いてしまっているカートリッジを良く見る。
こういう言い方は、あまり見ないような気がするのが不思議である。



インサイドフォースには、二つ有るんだよと解説する記事がある。
その殆どが、
ラッキングエラーによるインサイドフォースが見落とされている。
怪しからん、という雰囲気がある。

そもそも、
インサイドフォース云々という論議は、オフセットアームによるスケーティングを伴うインサイドフォースをどうするかと言う視点から生まれたインサイドフォースキャンセラーの是非を論じることから生じたのではないか。

その論じる過程でトラッキングエラーに関するサイドフォースに気付いただけの話ではないのか。